CBDは世界中で利用されており、医療・スポーツなどありとあらゆる分野でその有効性が証明されています。
その影響からか、CBD業界も活発化しており、様々な企業が設立され、多くの資源がCBD業界に流れ込んでいます。
今回は、急速に成長を遂げているCBD業界の現在と未来について解説していきます。
CBDと注目の背景
カンナビジオール(Cannabidiol:以下CBD)は、大麻に含まれる成分のことです。
現在、CBDは世界中で注目されており、CBDに関連した企業や商品が続々と誕生しています。
その背景としては、世界中でCBDに対する見方が変わったためです。
以下がCBDに関する世界各国での規制緩和や法律改正です。
- 2017年9月:世界アンチドーピング機構(WADA)が禁止薬物からCBDを除外。
- 2018年1月:世界保健機構(WHO)がCBDに関する有効性を報告書として発表。
- 2018年6月:アメリカ食品医薬品局(FDA)がCBDを成分とする抗てんかん薬である「エピディオレックス(Epidiolex)」を承認。
このような規制緩和の中で最もCBDに影響を与えたのは、2018年に行われたアメリカの農業法改正です。
農業法改正により、精神作用を及ぼす成分であるテトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol:以下THC)が含有量0.3%未満であれば、大麻をヘンプ(Hemp)と定義することになりました。
つまり、通常の農作物のように栽培・販売・流通することが可能となったのです。
その結果、ヘンプを栽培する人が増えており、それに応じて市場への供給量が増加しています。
CBDはこのヘンプから主に抽出・精製されます。
つまり、ヘンプ市場が活発になれば、CBD市場も活発になるということです。
このCBDですが、WHOが発表した報告書の通り様々な効果が期待できます。
CBDの主な効果を以下に列挙しました。
- 疾患治療作用(てんかん・パーキンソン病・関節リウマチなど)
- 抗不安作用
- 鎮痛作用
- 消炎作用
- 抗腫瘍作用
- 睡眠導入作用
これでもCBDの効果の一部です。
CBDの研究は発展途上であるため、今後も様々な効果が明らかとなってきます。
CBDは体内の恒常性を調節するエンド・カンナビノイド・システム(ECS)に作用することによって、その効果を発揮します。
また、CBDは中枢神経に作用することがないため、依存性・中毒性を心配する必要はありません。
WHOの報告書でも有害性がないことが報告されています。
そのため、日本国内の法律である「大麻取締法」でもTHCのように規制されることがないので、国内で手軽に入手することができます。
販売されているCBD商品
CBD商品は摂取方法によって分類されます。
CBDの摂取方法としては、
- 舌下摂取
- 経口摂取
- 吸引摂取
- 経皮摂取
となります。
摂取方法によって、血中に取り込まれて、全身を循環するCBD成分の割合も大きく変化します。
舌下摂取では20~35%、経口摂取では6~15%、吸引摂取では30~40%、経皮摂取では全身循環せずに局所的に取り込まれます。
それでは、各摂取方法に対応したCBD商品を紹介します。
舌下摂取
舌下摂取ではCBDオイルを利用するのが一般的です。
舌下に投与してそのまま口に数十秒含むだけで摂取できるので、手軽に利用することができます。
しかし、CBDオイルは苦みがあることがあり、苦みが苦手な人は舌下摂取は難しいかもしれません。
2021年1月20日に合同会社SIACOが自社ブランドである「SIACO(シアコ)」の製品である「SIACOプレミアムCBDオイル」を販売しました。
アメリカからヘンプ原料を輸入し、国内で製造している製品です。
その他にもMARITIMEやtokyo mooonなど日本国内で製造されているCBDオイルは多数存在します。
また、海外製ではAZTEC・Koi・PharmaHempなどのCBDオイルが有名です。
日本に輸出されており、CBDショップやネットで購入することができます。
経口摂取
経口摂取ではCBDグミやCBD入りドリンクなどCBDが含まれている飲食品で摂取します。
食べたり飲んだりするだけで摂取できるので、摂取するために機材などは必要ありません。
ただし、経口摂取はCBDが体内に取り込まれる割合が少ないため、効果が弱まってしまう可能性があります。
CBDグミはCanna Techというメーカーが日本製CBDグミを販売しています。
グミ1粒で25mgのCBDを摂取することができ、味も青りんご・グレープ・パイナップルなどを選ぶことができます。
海外ではHEMP Baby社がCBDグミを販売しており、こちらも1粒で25mgのCBDを摂取することができます。
CBDドリンクは株式会社Linkshipが「mellow」というCBDブランドを立ち上げ、マスカット風味のCBD炭酸飲料を販売しています。
海外ではCBDドリンクは市民権を得ており、SpindriftやLaCroixというブランドがあります。
吸引摂取
吸引摂取では電子タバコであるVAPEを使ってCBDリキッドを摂取します。
吸引摂取は最もCBDを体内に取り込むことができる方法であり、いち早くCBDの効果を感じたいなら吸引摂取が最もおすすめです。
日本の老舗ブランドである「CANOVY」が7種類のフレーバーが楽しめるCBDリキッドを販売しています。
国内メーカーではその他にも+WEEDやHERBSといったメーカーもCBDリキッドを販売しています。
海外のメーカーではPharmaHemp、AZTEC、Koi、CBDFXなどがあり、日本に輸入されています。
THCなど違法物質も検査で含まれていないことがわかっているので、安心して利用することができます。
経皮摂取
経皮摂取では、CBDが配合されたCBDクリームを直接皮膚に塗りこむことで摂取することができます。
国内では先ほど紹介したCANOVYが100mgのCBDが配合されたCBDクリームを販売しています。
無味無臭のクリームで、ヘンプ独特の匂いもありません。
他の国内メーカーである吉兆堂やgrön japanもCBDクリームを販売しています。
海外のメーカーではPharmaHempなどのメーカーがCBDクリームを販売しており、国内で購入が可能です。
CBD業界のバリューチェーンとプレーヤー
バリューチェーンとは、事業活動によって生み出される付加価値を一連の流れで捉える考え方のことです。
CBD業界のバリューチェーンは以下のような流れになっています。
- 農場がCBD原料となるヘンプを栽培・加工を行う。
- メーカー(D2C)もしくは輸入卸がCBD原料もしくは海外製のCBD商品を輸入し、自社で開発・製造を行う。
- メーカーによっては委託先の製造工場に依頼して、CBD製品を生産する。
- 小売店/メディアは、メーカーや輸入卸が輸入もしくは製造したCBD製品を認知させつつ店頭やECサイトで販売する。
- 業界団体は市場に出回っているCBD製品を検査したり、CBD業界の健全性や有益性をアピールする。
CBD業界のバリューチェーンでは、
- 農場
- メーカー(D2C)
- 輸入卸
- 製造工場
- 小売店/メディア
- 業界団体
というプレイヤーが深く関与しています。
ここからは、それぞれのプレイヤーについて解説していきます。
農場
2018年のアメリカの農業法改正により、THC0.3%以下のヘンプは農作物となりました。
規制がなくなったことによってヘンプを製造する農家も増えています。
その背景には他の農作物よりも収益性が良いことが挙げられます。
食品グレードのヘンプであれば、1エーカー(約4000平方メートル)あたり750ドルの収入が期待できます。
一方で大豆の収益は1エーカーで150ドル程度です。
このように収益が約5倍以上となる可能性があるヘンプが農家の間でも注目されています。
メーカー(D2C)
メーカーは参入者が少ないCBD業界に注目しており、自社製品を開発・製造してCBD業界に参入しようとしてきています。
基本的なビジネスモデルとしては、D2Cと呼ばれる広告代理店や小売店を経由せずに自社で販売する方式をとっています。
また、CBDは人気が高まっているもののCBD=大麻という認識はいまだ払しょくできておらず、広告規制など様々な制約があります。
そのため、InstagramやTwitterなどのSNSを活用することによるマーケティングを展開しています。
インフルエンサーにCBD製品を提供して紹介してもらうことにより、製品の認知を高めようとしているのです。
輸入卸
輸入卸は海外で製造したCBD製品を輸入し、日本国内で販売するというビジネスモデルです。
海外のCBDブランドであるPharmaHempやCBDFX、Endocaなどが日本市場に参入してきており、2016年以降に日本に販売代理店を続々と設立しています。
製造工場
メーカーが参入してきたことにより、メーカーの委託製造を受注する製造工場を増加しています。
日本国内では「大麻=危険」という概念やCBD原料のリスクにより、CBD製品を製造する工場はごく少数です。
近年では製造工場のサポートとして株式会社日本CBD協会などが製造などのサポートを行っています。
製造工場が少ない分、製造するコストは高めに設定されています。
それに応じてCBD製品の販売価格も割高に設定されています。
小売店/メディア
CBD MANiAなど様々なメーカーの製品を扱う総合型オンラインショップが以前は販売の主流でしたが、現在では実店舗によるCBD製品の販売も行われています。
また、メーカーが自社サイトを運営して、そこで製品を販売しています。
自社サイトを持っていない企業は楽天やYahoo!ショッピングなどの大手ECモールに店舗を出店して販売を行います。
つまり、CBD製品の自社サイト・ECサイトへの出店・店舗販売の3つが考えられます。
CBD製品はTwitterやInstagramで宣伝してサイトに誘導して購入してもらうのが一般的です。
最近では、大手ASPであるA8.netがCBD製品の広告を取り扱い始めており、メディアによる販売網も広がっています。
業界団体
日本カンナビジオール協会などCBDに関わる複数の団体が誕生しています。
業界団体の目的としては以下のようなものがあります。
- CBD製品の安全性評価を行い、その評価における費用を稼ぐため。
- CBDに関わる企業に協会に参加してもらい、ネットワークを広げるため。
- CBDの基礎及び臨床研究を推進し、医療技術の発展に寄与するため。
CBD(大麻)業界の市場規模
Global Market Insights Inc.のレポートによると、2019年のCBD業界の市場規模は約2,952億円です。
2026年には9兆4,200億円にまで発展すると予想されています。
各国の規制緩和によって、市場が拡大しているためだと考えられています。
日本国内の市場規模は他の国と比べると、いまだに小さいままです。
しかし、近年の大麻解禁や健康志向の流れによって、CBDが注目されつつあります。
CBD製品を扱う国内メーカーも誕生しているため、日本のCBD市場が活発になることが予測されます。
ゆくゆくはCBD原料となるヘンプの栽培も日本で解禁される日が来るかもしれません。
CBD(大麻)関連の企業
ここからは、世界のCBD(大麻)関連企業についてご紹介します。
ティルレイ(TLRY)
ティルレイは、カナダを中心に南北アメリカのほか、ヨーロッパ、南アフリカ、オーストラリアなどに拠点を持つ医療用大麻の生産・マーケティング会社です。
主に医療大麻の研究と生産から販売まで行っており、安全性に十分配慮した合法的な大麻栽培と販売チャネルの多様性が強みの企業です。
一般消費者向けにはお菓子やオイルなど展開しており、アマゾンやコストコ、ウェルマートでの販売経路も持っています。
ティルレイは高品質の医療用大麻製品を世界5大陸にまたがる12カ国で何万人もの患者に提供しています。
キャノピー・グロース (CGC)
キャノピー・グロースは、カナダに本社を置く大麻製品企業です。
2009年に設立され、現在ではニューヨーク証券取引所に上場するまでに成長しています。
主に嗜好品としての大麻製品を販売しており、アメリカやヨーロッパなど世界各国に輸出しています。
ヘンプ由来のCBD製品もの販売を行っています。
残念ながらアメリカなど一部の国でしか販売されていないので、日本国内では入手できないようです。
クロノス・グループ (CRON)
クロノス・グループは世界各国で事業を展開する多角的・垂直統合された大麻企業です。
大麻の製造・加工・販売を行っており、全世界に販売ネットワークを持っています。
カナダ保険省の医療用大麻ライセンスを所有しているため、医療用大麻の生産・販売も行っています。
アフリア(APHA)
アフリアはカナダに本社を置く医療用大麻製造企業です。
カナダの医療用大麻生産ラインセンスを所有しており、温室栽培によって医療大麻を生産していることが特徴です。
また、多彩な摂取方法に対応できるようにカプセル・経口液剤・注射薬剤・吸入器などを製造・販売しています。
ヘクソ(HEXO)
ヘクソはカナダの大麻関連企業です。
医療大麻及び嗜好品大麻の製造・製造販売を行っています。
CBD製品の販売に力を入れており、オイルやスプレー、パウダーなど様々な形に加工した製品を販売しています。
オーロラ・カンナビス(ACB)
オーロラ・カンナビスはNASDAQに上場している医療大麻製造企業です。
カナダの医療大麻生産ライセンスを取得しており、大学や研究機関と提携して研究を行っています。
大麻による効果が報告されているてんかん・多発性硬化症などの治療薬を開発が主な事業内容となっています。
NBEV(ニューエイジ)
アメリカに本社を置く健康飲料メーカーです。
自然食物を原料とした健康飲料を中心に販売しています・
近年ではCBDを配合した飲料を販売して注目を浴びており、今後のCBD飲料のリーディングカンパニーになることが期待されています。
CBD業界の未来に期待
今回は、CBD業界の現在と未来について解説しました。
CBD業界は発展途上ですが、今後確実に発展していきます。
それに応じて日本国内のCBD市場も活発になっていくでしょう。
どれだけ早期に参入できるかが国内のCBD市場を席捲できるかのカギとなります。
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